はじめにネット配信ビジネスに潜む法律のワナ
ネット環境の普及に伴い、アダルトライブチャットやアダルト動画配信サイトなど、オンライン上のアダルトビジネスが急増しています。
「ネット上だけのビジネスだから勝⼿に始めても⼤丈夫」と思っていませんか?
実はこれらの事業を開始するには「映像送信型性⾵俗特殊営業」の届出が必須です。無届出で運営すると重⼤な法律違反となり、取り返しのつかない事態になりかねません。
映像送信型性⾵俗特殊営業の定義
⾵営法の第2条8項では、映像送信型性⾵俗特殊営業を「専ら、性的好奇⼼をそそる写真、ビデオテープその他の物品に収録された映像⼜は性的好奇⼼をそそる⼈の裸態の映像を電気通信設備を⽤いて送信する営業」と定義しています。
インターネットなどの通信設備を使い、アダルトコンテンツの映像を顧客に送信して利益を得るビジネスモデル全般がこれに当てはまります。
該当する具体的な業態
具体的には、出演者と顧客がリアルタイムでやり取りする「アダルトライブチャット」の運営や、⽉額制・ 都度課⾦制の「有料アダルト動画配信サイト(アダルトVOD)」 などが該当します。実店舗で接客しなくても、ネットを通じて映像を配信するサービスであれば規制の対象です。
ただし、単なるアダルトグッズのネット通販などは別の扱いとなるため、事業内容の正確な判断が必要です。
「届出制」の特徴と他の⾵俗営業との違い
映像送信型性⾵俗特殊営業は「届出制」となっており、キャバクラなどのような厳しい事前審査はありません。しかし、だからといって誰でも簡単に始められるわけではなく、⾵営法が定める要件を確実に守る必要があります。
最⼤の違いは、顧客を招き⼊れる実店舗を持たない「ネット完結型」のビジネスであっても、運営拠点についての届出義務が発⽣するという点です。
届出ができない⼈(⽋格事由)
他の⾵俗営業と同様に、⼀定の⽋格事由に該当する⼈は届出ができません。
破産⼿続き開始の決定を受けて復権を得ていない⼈、過去5年以内に⾵営法違反などで処罰された⼈、暴⼒団員やその関係者、未成年者などがこれに当たります。
ネットビジネスであっても、運営者の適格性は厳しく問われます。法⼈として運営する場合、役員の中に⼀⼈でも該当者がいれば届出はできません。
事務所の所在地に関する要件
ネット配信であっても、運営の拠点となる「事務所」が必要です。
ただ客が立ち入る店舗型と異なり、用途地域や学校・病院等からの距離制限、床面積などの法的な立地制限はありません。自宅を事務所(営業の本拠)とすることも可能です。
事務所を開設する際の注意点法的な用途地域制限がない一方で、実務上は以下の点に注意が必要です。
賃貸物件の利用制限:
一般のマンションなどの賃貸物件を事務所として使用する場合、契約書上の使用目的が「住居専用」となっていると営業が認められません。
物件のオーナー(または管理会社)から事業利用の承諾書をもらう必要があります。
バーチャルオフィスの不可:
映像を送信・管理するための設備や実体があることが前提となるため、バーチャルオフィスでは警察署への届出が受理されません。
配信内容・ 広告に関する規制
ネット上の営業であるため、配信内容や広告への規制が特に重要です。
児童ポルノの配信や18歳未満の者の出演は絶対禁⽌です。
また、サイトには18歳未満のアクセスを防ぐための明確な年齢確認画⾯の設置や、フィルタリングソフトへの対応が義務付けられています。
さらに、⻘少年を誘引するような過激な広告宣伝や、迷惑メールでの執拗な勧誘なども厳格に制限されています。
届出に必要な書類⼀覧
| 書類名 | 取得先・作成者 |
|---|---|
| 営業開始届出書 | 警察署で取得・⾃分で作成 |
| 営業の⽅法を記載した書類 | ⾃分で作成 |
| 誓約書(⽋格事由等に関するもの) | ⾃分で作成 |
| 住⺠票(本籍地が記載されたもの) | 市区町村役場 |
| 賃貸借契約書及び使用承諾書のコピー | 所有者・不動産会社・オーナー |
| 事務所の図⾯ | ⾃分で作成 |
| ウェブサイトの構成図やURL情報 | ⾃分で作成 |
| 法⼈の場合:定款・登記事項証明書 | 法務局 |
お問い合わせ
届出の流れと営業開始までの期間
⼿続きの流れとしては、まず事務所を確保し、サイトの構築と並⾏して必要書類を準備します。書類が全て整ったら、事務所の所在地を管轄する警察署の⽣活安全課へ提出します。
形式上の不備がなければその場で「受理」され、受理されたその⽇から合法的に営業(配信)を開始することができます。事前審査による待機期間がないため、準備さえ万全ならスピーディな開業が可能です。
営業開始後に守るべきルール
サイトがオープンした後も、厳重な管理が求められます。ライブチャットの配信者や動画の出演者全員の確実な年齢確認と、本⼈確認書類のデータ保存は必須義務です。
また、出演者名簿を常に最新の状態で事務所に備え付けておかなければなりません。
さらに、サイトのURLや構成、事務所の所在地などに変更があった場合は、速やかに警察へ変更届を提出する必要があります。
違反した場合の罰則
ネット上のことだからと⽢く⾒ていると、⾮常に重いペナルティを受けます。
無届出での営業や、18歳未満の児童を出演させた場合は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰⾦」などの重い刑事罰が科せられます。
年齢確認が⽢かったり、広告規制に違反したりした場合も、公安委員会からの営業停⽌命令や、最悪の場合はサイトの閉鎖命令が出される可能性があります。
専⾨家(⾏政書⼠)に相談するメリット
映像送信型のビジネスは「ネット完結で簡単」と軽視されがちですが、届出にはサイト構成図の作成や複雑な要件のクリアが必要です。また、サイトのシステム要件(年齢確認機能など)が法律の基準を満たしているかの判断も素⼈には困難です。
⾵営法やネット法務に詳しい⾏政書⼠に相談すれば、確実な書類作成だけでなく、適法なサイト運営のための継続的なサポートが受けられます。



